Civil litigation matters 民亊法務業務

相続・遺言とは・・・

自然人の死亡(被相続人)により、その人が所有していた財産(資産・負債全て)や権利義務を一定の身分関係(法定相続人等)にある人が、法律上包括的に承継することを言い、複雑な法的手続きが発生します。

1. 財産の調査
【プラスの財産】
動産(現預金、有価証券、貸付金、売掛金、自動車、家財、船舶、骨とう品や所外、貴金属など)、不動産(宅地、農地、建物、店舗、居宅、借地権、借家権など)
【マイナスの財産】
負債(現預金、有価証券、貸付金、売掛金、自動車、家財、船舶、骨董品や所外、貴金属など)、未払税金等(所得税や住民税、固定資産税や延滞税等の未納分)、未払費用(水道光熱費や電話代、医療費、家賃などで被相続人が使用していた期間分のうち未払いのもの)

相続の対象とならない財産(身分的な権利・義務関係や祭祀関連の財産など)一身専属的な権利義務(生活保護受給権、国家資格、親権、扶養義務など)香典、弔慰金、葬儀費用、生命保険金(亡くなった方自身が保険金の受取人になっているものを除く)、死亡退職金(受取人の指定がなく、亡くなった方に受取権利があるものを除く)、遺族年金(亡くなった方自身が保険金の受取人になっているものを除く)、墓地、墓石、仏壇、祭具、系譜(祭祀主催者が承継するが遺産分割の対象とはならない)

2.財産を承継する人を確定する
1. 遺言書がある場合
正しい遺言書がある場合は、遺言書に記載されている人が優先されます。ただし、法定相続人全員が同意している場合は遺言内容より同意内容が優先されます。
遺留分制度(遺言書がある場合のみ)
被相続人の配偶者・子ども・両親などの法定相続人には民法が保証した最低限の分割割合が定められており、「遺留分」と言います。
・対象者
配偶者直系卑属(子ども、孫など)⇒「法定相続分の半分」
直系尊属(両親、祖父母など)⇒「法定相続分の1/3」(兄弟姉妹に遺留分は認められていない)遺留分を侵害されていたら、侵害した相手に「遺留分侵害額請求」を行います。
2. 遺言書がない場合
配偶者は常に相続人となります。

第1順位:被相続人に子供がいる場合(代襲相続対象)⇒配偶者[1/2]、子供[1/2]

第2順位:被相続人に子供(嫡出子・非嫡出子の相続分は等分)がおらず親が存命の場合⇒配偶者[2/3]、親[1/3]

第3順位:被相続人に子供、親がおらず兄弟姉妹の場合(代襲相続対象)⇒配偶者[3/4]、兄弟姉妹[1/4](全血の兄弟姉妹:半血の兄弟姉妹)1:2
3.相続するかどうか確定

遺産相続の方法(相続放棄、単純承認、限定承認)

熟慮期間(相続の開始を知った日から3か月)内に相続放棄するかどうか判断します。ただし、財産を調べるのに時間が必要な場合などには、相続放棄の期間伸長(期間を延ばす)手続きをすることができます。単純承認:亡くなった人の財産・権利・債務を全て引き継ぐ方法。

限定承認
単純承認をしたくない場合は、プラスの財産範囲内でだけマイナス財産を引き継ぐ。
相続放棄
始めから相続人ではなかったとみなす。
4.遺産分割協議にて財産の分け方を決める
遺産分割の基本ルール
遺言書による指定
遺産分割協議による遺産分割
遺産分割調停

遺言書による指定が最優先され、遺言書による指定のない財産については、相続人同士の遺産分割協議により分割します。分割協議がまとまらない場合は、裁判所で遺産分割調停にて行います。

5.遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議書の作成に必要な書類
・法定相続人全員の署名・捺印がある遺産分割協議書
・被相続人の除籍謄本、戸籍謄本又は全部事項証明書
・相続人全員の戸籍謄本又は全部事項証明書
・相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議書に記載が必要項目
・被相続人の最後の住所、氏名、死亡日
・相続人全員が合意している旨の内容
・分割する相続財産の詳細
・相続人全員の氏名、住所、捺印
6.相続財産及び不動産の名義変更を行う

・銀行口座(預貯金)、株式などの名義変更
・不動産の所有者移転登記(司法書士の独占業務)

7.相続税の申告・納付を行う

相続税の基礎控除額とは

基礎控除額とは、相続税の申告も納税もしなくていい金額。
相続税の基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人の中に相続放棄した人がいる場合、その相続放棄がなかったものとして計算します。
法定相続人に養子がいる場合、実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人までを法定相続人に含めて計算します。(相続税の算出、申請については税理士の独占業務)

相続全体の手続きの流れ

死亡届からすべての相続手続きが完了するまでの基本的な流れは以下のようになります。

1. 相続(被相続人の死亡)から7日以内に必要な手続き
死亡届の提出
死体火葬(埋葬)許可申請書の提出(国外で亡くなった場合には3カ月以内)
2. 相続(被相続人の死亡)から14日以内に必要な手続き
世帯主変更届(亡くなった人が3人以上の世帯の世帯主だった場合)
住民票の抹消届
国民健康保険証の返還、遺族の国民健康保険の加入
3. 相続(被相続人の死亡)から3カ月以内に必要な手続き
葬儀の実施
金融機関への連絡
生命保険・損害保険の手続き
社会保険・年金関係・遺族年金の手続き
遺言書の確認・検認
相続人及び相続財産の調査、相続人の確定
相続人全員で遺産分割協議の開始
相続放棄・限定承認
4. 相続(被相続人の死亡)から4カ月以内に必要な手続き
被相続人の所得税の準確定申告及び納税
5. 相続(被相続人の死亡)から10カ月以内に必要な手続き
遺産分割協議書の作成
不動産の名義変更、預貯金の払い戻し等の相続手続き
相続税の申告及び納税
6. 期限がない手続き
遺言書の検認
遺産分割協議、調停、審判
銀行の預金口座などの名義変更

手続きは前後する可能性があります。ただし、相続放棄・限定承認、準確定申告、相続税の申告については期限厳守。期限がない手続きに関しても、できるだけ早く着手することが望ましい。

8.遺言書について

代表的な遺言の種類としては、下記のようになります。

1)自筆証書遺言書

遺言をする人が自書して作成する遺言書

要件
①遺言者本人が自筆で全文を書く(添付の財産目録は手書きでなくてもよい)
②遺言書を作成した日付を正確に記入
③戸籍上の氏名をフルネームで記入し、印鑑を押印する。
※訂正には印を押印し、欄外に訂正箇所を書き署名する。

ポイント
☆自分一人で作成できる
☆公証人や専門家に支払う報酬がかからない
☆遺言の内容を秘密にしておける

デメリット
☆遺言の要件を満たしていないと無効
☆遺言書の存在に気付かず発見されない、紛失リスク有
☆改ざんや隠ぺいのリスク有

2)公言証書遺言

公証人が権限によって公正証書にした遺言書

要件
①公証人に加えて第三者となる証人2名が必要
②本人確認資料、戸籍謄本など

ポイント
☆無効になるリスクが限りなく少ない(信用性が高い)
☆公証人役場で保管されるため遺言書の紛失が起こらない
☆遺言書を偽造されない
☆裁判所での検認手続き不要

デメリット
☆各種手数料や専門家報酬が発生